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イベントレポート
2011.10.14
アレッサンドロ・カルボナーレ 公開マスタークラス&ミニコンサート 〜
イタリアの風を感じる歌心に、満員の聴衆が酔いしれた夜〜
2011年10月04日(火)/渋谷・アクタス
アレッサンドロ・カルボナーレ(クラリネット)
黒田 亜紀(ピアノ)
フランス国立管弦楽団を経て、現在はローマ聖チェチーリア音楽院で後進の指導にあたり、同管弦楽団首席としても活躍している世界的なクラリネット奏者 アレッサンドロ・カルボナーレが来日。公開マスタークラス&ミニコンサートを行なった。
公開マスタークラスを受けたのは3名。それぞれ『ドゼニッティ:クラリネット・ソロのための小品』、『マルティヌー:ソナチネ』、『ロッシーニ:序章、主 題と変奏』をレッスンされた。カルボナーレのレッスンは非常に丁寧。まず全体の曲を通して聴いてから、それぞれの受講生に合わせたテンポでレッスンを進め る。イタリアの名手として名高いカルボナーレの知識、感性は素晴らしく、随所に曲の背景、作曲家の意図などを交えながら的確に指導。しかし、それだけに捕 らわれないのが今回のマスタークラス最高の見どころだった。
カルボナーレは作曲家の意図を解説しながら、時にその作曲家の指示を無視するよう受講者に語る。聴衆に"より効果的に聞こえる"よう演奏するためには、奏者 として演奏上するべきことを伝えているのだ。そのためには「ヴァリエーションはテクニックだけに頼ってはならない」、「同じことを繰り返すときは1回目と 2回目を変えて演奏しなければならない」など、音量、テンポ、表現すべてにおいて的確に指示。『ロッシーニ:序章、主題と変奏』のレッスンでは、彼にしか 不可能な超絶技巧を披露し会場中が苦笑してしまったのだが、それはカルボナーレだから許される場面だろう。
また、お手本として彼の愛器"レシタル"から奏でられる音色はもちろん、演奏したカルボナーレの表現がすばらしい。まるでイタリアオペラを聴いているかの ような上昇系から少し停滞しての下降系などのフレーズは、まさにカルボナーレの魅力そのもの。彼の奏でるフレーズに重力を感じた聴衆も多かったようだ。
ミニコンサートでは『プーランク:ソナタ』を演奏。
マスタークラスで少しずつ聴けた彼の演奏を満喫したいと、会場中が待ちかねていた中でのミニコ ンサートの開演。聴衆の期待は最高潮に達していた。カルボナーレの演奏はレッスンで指導していた解釈、奏法などがふんだんに織り込まれており、まるで極上 のイタリアンの前菜であった。なぜ前菜だったのかは、アンコールでの拍手を聞いていればおわかりいただけただろう。もっと聴きたいという聴衆からの盛大な 拍手がそれを物語っていたのだ。カルボナーレのフルコースを楽しみたい方は、CDを買うなり、コンサートに足を運ぶなりして、ぜひ存分に楽しんでもらいた い。
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