Interview インタビュー

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橋爪 惠梨香氏 インタビュー

橋爪 惠梨香

オーケストラ・アンサンブル金沢オーボエ奏者として活躍中の橋爪惠梨香氏に、マリゴとの出会いやリードなどについてお話をうかがいました。

“マイナー”な楽器を選んで

オーボエは吹奏楽部で吹き始めたのですか?

それが、実は吹奏楽部で始めたわけではないんです…!
中学では吹奏楽部に入部しましたが、母が持っていたフルートを借りて吹いていました。
ただ小さな時から続けていたピアノの先生のところにオーボエがあるのを知って、どうやら「やりたい」と言ったらしいんです。

橋爪 惠梨香

「言ったらしい」んですね(笑)

私は覚えていないんですが、どうやらそのようで…
先生がそれをきっかけに楽器を譲ってくださって、オーボエを始めることになったわけです(笑)

ということは、フルートとオーボエを同時に練習していたんですか!?

そうなんです。
何となく音楽高校に進もうかと考え始めた時に、フルートは人口が多すぎる…それならマイナーな楽器の方が合格しやすいかな?とオーボエを選びまして(笑)
その時にフルートを選んでいたら、今ここにはいないかもしれませんね!

なんというスタート!では本格的に演奏し始めたのは高校に入ってからということですね?

そうですね。
オーボエを吹き始めてすぐからリードも作っていたのですが、ものづくりが好きな私には性が合っていたようで、高校でもどんどん楽しくなり、そのまま相愛大学に進学しました。
お世話になった清水明先生は、「いろいろな経験をしてきなさい!」と送り出してくれるタイプで、高校生の頃からいろいろな講習会に参加していました。
私は天邪鬼なタイプなので、「これをやりなさい!」と言われたらやりたくなくなってしまうのですが(笑)
何でも「やってみたらいいじゃん!」と否定をしない教育方針の清水先生のもとで自由に学ばせていただけたことが良かったのかもしれません。

橋爪 惠梨香

大好きな街で過ごした4年間

そこから留学に至るには、どんなきっかけがあったんですか?

在学中に大学母体である相愛学園の120周年行事でオーケストラのヨーロッパツアーがあって、ドイツ〜ポーランド〜イタリアと回りました。

学生時代にヨーロッパツアーなんて、素敵!

その際に初めてドイツに行った時に、現地の方や在留日本人の方と交流があり、住みやすそうな印象を持ちました。
実際に訪れて暮らしに触れてみると魅力的で、本格的なヨーロッパの音楽を学んでみたいと思うきっかけになりました。
実はこれも人数の少ないオーボエだから2回生だった私も参加することができて…マイナーな楽器の良さですね(笑)

ドイツに留学されたのは卒業後すぐですか?

相愛大学を卒業した翌秋に、カールスルーエ音楽大学に入学しました。
トーマス・インデアミューレ先生には日本でお世話になったことがあり、レッスンを受講した後に自分の音が変わった実感を持つことができ、留学先として先生のクラスを選びました。
基礎的なことも含めて、信じられないほどみっちりレッスンをしてくれる先生です(笑)
毎週のレッスンのほかに、月1回の吹き合い会もあり、その時にはピアノやチェンバロの伴奏者(コレペティトゥアー)が共演してくれます。
曲は自由に選べたので、チェンバロとバロック作品に取り組むこともできましたし、先生からいただく講評もありがたかったです。
カールスルーエという街もこじんまりとして過ごしやすく、もともと都会よりそういう街が好きな私には居心地が良く、大好きな空間でした。

橋爪 惠梨香

クリスティアン・シュミット先生にも習われていたんですね。

南仏で開催されていたクリスティアン先生の講習会に参加したのが最初の出会いだったのですが、皆で芝生に寝転んで星空を見上げた思い出もあります。最終的には丸4年ほどヨーロッパに滞在しました。
本当はもう少し居たいとも思いましたが、最終的に仕事をするなら日本でと思っていたので帰国を決めました。

2014年に帰国されたんですね。

関西に戻って、バイトをしながらオーボエを続けていました。継続してお仕事をいただくには名前を売らないといけないと思い、2016年の日本音楽コンクールに挑みました。
直前に再渡欧し、トーマス先生とクリスティアン先生のもとでたくさん鍛えてもらいました。優勝後はいただく仕事の内容もペースも大きく変わりましたね。
もちろんそれが継続されるかどうかは本人の取り組み方次第ではありますが、コンクールがたくさんの人に知っていただくきっかけになったことは間違いありません。

最初から“第二の故郷”のように感じていた金沢

オーケストラ・アンサンブル金沢に入団されたのは、2023年とのことですね。

オーディション以前にも何度かエキストラで呼んでいただいていて、その時から好印象を抱いていました。
アンサンブル金沢の特徴である“室内オケ”という演奏形態はもともと好きですし、自分の音色とも合うオケだなぁと感じていました。
長年在籍されている加納律子さんもトーマス先生門下で、草津の講習会に参加した際には通訳をしていただいて、昔からお世話になっていました。
同じ門下だからか分かりませんが、自然と音色も合うような気がしています。

実は金沢には一時帰国中の旅行で訪れたことがありました。当時は駅前もまだそんなに開発されておらず、駅から街の中心地まで少し離れていることや自然の多さ、街の規模などがカールスルーエに似ているなぁと思いました。
その時から”第二の故郷”のような懐かしさを覚える印象だったんです。でもいざ暮らしてみると、日本海側ということもあり雨が多くて冬は暗いし…
実家のある大阪に帰ると毎日カラッと晴れていて、いいなぁ〜と思うこともありますよ(笑)

橋爪 惠梨香

そうなるとやはりリードや楽器にも影響がありますか?

もちろん!!!
アンサンブル金沢はツアーも多いので、土地による違いを実感することが多いですね。
例えば先日は中国地方でのツアーがあったのですが、最初の広島では乾燥がひどく、次に下関に行くと逆に湿度を感じましたし、最後に訪れた岡山県の津山では大寒波…着いた日の夜には星を眺めていたはずが、寝て起きたら吹雪!
湿度計だけでは計れない、身体で感じる空気感の違いがありますね。

どのパートも吹ける901の懐の広さ

長年マリゴの901モデルを演奏されていますね。

初めて手にした楽器から901でした。
煌びやかな音色を持つ2001も魅力的ですが、まだオケ入団前の将来吹くポジションも決まっていない段階で、「901なら1stも2ndも吹けるオールマイティーさを持っている」と思って選びました。
そして、実際に入団したアンサンブル金沢では、1stも2ndもEHも全てのパートを担当しています。パートが固定ではないことによる難しさもありますが、とても楽しいです。

もちろんどんな楽器を吹いていても、ここの音程が…あと少し発音が…などリクエストはつきものです。でも、改良されて均等に整えられていくことは、必ずしも美しさに繋がるとは限らないとも思います。
たとえ何か不都合が起こっても、音色そのものに良さのあるマリゴはいつも魅力的です。

橋爪 惠梨香

イングリッシュホルンもマリゴをお使いですね。

私は身長も高くないですし、手も小さくイングリッシュホルンは身体に合っていないと思っていました。
そんな時にマリゴのイングリッシュホルンを吹いてみたら、すごく良いなと!
圧倒的な吹奏感の良さを感じましたし、オーボエと同じような感覚で演奏できて、持ち替えがしやすいことも決め手になりました。

スタンダードが愛されるには理由がある

リードはどんなセッティングですか?

最近は全長73mmくらい。ケーンは決まっていないですが、ある程度抵抗があって張りもありつつ、息が入りやすいものが好きです。
チューブは長年NONAKAの47mmです。学生時代に買ったものを繰り返し使いながら、そこに少しずつ新しいものも買い足しています。
シェーパーは変え始めると沼にハマると分かっているので(笑)ここ10年以上はヘルトナーゲルの39番を使っています。

これは割と多くの人が使っているスタンダードな組み合わせの1つだと思います。
私は天邪鬼なので、スタンダードにはなかなか手を出さないのですが(笑)
やっぱり”スタンダード”には、多くの人が使っている理由があるんですよね。
選択肢が増えてきている世の中ですが、一度スタンダードを試してみるのは悪くないですよ!

メイキングマシーンは“キューブ”をお使いだと聞きました。

テンプレートはオーボエが現在標準装備されている21番で、イングリッシュホルンの時は17番に付け替えて使っていますがすごく良い感じです!
オーボエもイングリッシュホルンも同じテンプレートで削ることはできますが、イングリッシュホルン用のテンプレートを使うとよりうまくいく気がします。

キューブ

日課にしている練習はありますか?

時間がある時には、トーマス先生のクラスで最初の課題として与えられるジレの上級エチュードを練習しますね。特にレガートの課題の7番やスタッカートの10番、ダブルタンギングの23番をやります。
昔の書き込みを見て「当時あんなことを言われたな」と思い出したり、無意識に出てしまう癖なんかも再認識することができます。

レガート

最後に、音楽を楽しむ皆さんへメッセージをお願いします。

いろいろな楽しみ方がありますが、音楽でハッピーになれるといいですね!
音楽は楽しむものですから!

橋爪 惠梨香

大阪府出身。相愛高校音楽科を経て相愛大学音楽学部に入学。卒業後渡独し、カールスルーエ音楽大学修士課程、フランス・モンベリアール地方音楽舞踏演劇学校を卒業。第85回日本音楽コンクール第1位、岩谷賞(聴衆賞)、瀬木賞を受賞。小澤征爾音楽塾オペラプロジェクトやNHK-FM「リサイタルノヴァ」、Music Dialogue2017~2018・ディスカバリーシリーズ、草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティバル等に出演。ソリストとして東京フィルハーモニー交響楽団、群馬交響楽団、相愛オーケストラと共演。これまでに朝倉祥古、故岩崎勇、清水明、土井恵美、古部賢一、トーマス・インデァミューレ、クリスティアン・シュミット各氏、イングリッシュ・ホルンをアネッテ・シュッツ氏に師事。
東京フィルハーモニー交響楽団にて契約団員を経て、現在、オーケストラ・アンサンブル金沢オーボエ奏者を務める。
【使用楽器:Marigaux Oboe 901/Marigaux English Horn 930】