インタビュー
INTERVIEW
第81回(2012)日本音楽コンクール第1位・篠ア孝
(大阪フィルハーモニー交響楽団トランペット奏者)
−コンクールはスキルをアップさせるための場所−

昨年度の日本音楽コンクール・トランペット部門で第1位を獲得したのは、
大阪フィルハーモニー交響楽団の篠ア孝さん。
コンクールのことや楽器のことなど、うかがいました。
◆恩師との幸運な出会い
トランペットと最初に出会ったのは、川崎市の稲田中学校の吹奏楽部です。高校でも吹奏楽を続け、そのまま自然に音大(洗足学園音楽大学)に進みました。高校2年生のときに、先輩の紹介で当時NHK交響楽団にいらした栃本浩規先生に、さらには大学生のときに、栃本先生との縁で津堅直弘先生に師事することができたのは、本当に幸運でした。なにしろ、中学・高校の頃はまったく吹けなくて、本当に下手だったんです(笑)。素晴らしい先生方に巡り会えたことは、何よりの財産だと思っています。
僕にとってコンクールは、実は、こうした先生方への僕の発表会でもあるんです。審査員をされていることが多いので、成長を見ていただけたらいいなと…。もちろん、音楽家としてキャリアを積むためにも、コンクールを受けてよかったし、これからも機会があれば挑戦しようと思っています。
コンクールで出される難しい課題、ふだんはやらないような曲を一所懸命に練習することで、自分の能力を高めることができます。自分が伸びていくための経過として、その間集中する意義は大きい。ある意味、結果より重要なことだと思います。
◆ミュンヘン・コンクールでの経験
一昨年、ミュンヘン・コンクールに参加したことが、とてもいい経験になりました。そこで、コンクールの概念がガラリと変わったんです。ミュンヘンに行ってわかったのですが、技術は日本人も決して負けていない。が、決定的に違うことがあります。それは、音楽をしているかどうか。
ミュンヘン・コンクールでは、音をひとつふたつ間違ったところで大きな減点の対象にはならない。なかには課題曲を間違って用意してきて、果敢にもそのまま吹いた人がいました。演奏は完璧で、ブラボーの嵐! 日本だったらどんなに上手でもたぶん失格になっていたと思うんですが、ミュンヘンではそれで通りましたからね。ただ、彼の音楽には説得力があった。僕は説得力のある演奏をできなかった。
審査の後のレセプションも印象的でした。出場者たちが、次々に審査員に会いに行くんです。で、自分がどうして落ちたのか、聞くことができる。その後のモチベーションもあがりますよね。
せっかくコンクールに出るからには、結果を出さなければいけないと思っていたのですが、そうではなくて、自分のスキルをアップするための場所だと思うようになりました。コンクールをリサイタル会場だと思い、自分の音楽を表現する。その結果として、良ければ賞をもらえる。それまでも頭ではわかっていたつもりだったのですが、現実にはギスギスしてしまっていた。ミュンヘンで生き生き演奏している世界の同世代の人たちを見て、よくわかりました。
日本の場合も、審査員はわかっているのでしょうが、受ける側が「絶対に結果がほしい」とカチンコチンになっている。今回の前に参加して第3位になった日本音楽コンクールのときがまさにそうでした。自分の演奏がまったくできなかった。で、ミュンヘン・コンクールの経験をいかして、今回はリサイタルのように表現することだけを心がけたら、落ち着いて演奏できました。
◆オールマイティに応えてくれるバック
愛器はBach 180ML37 シルバー
今使っている楽器は、バック180ML37シルバーですが、最初のバックは、高校1年生のときに先輩にすすめられて買った180ML37赤ベルのシルバー。当時はなにしろ下手だったので細かなことはまったくわかりませんでしたが、音と響きが、それまで吹いていた楽器とはまったく違うことはすぐわかりました。あったかくって、ふくよかなんだけど、重すぎない。すごくリラックスして吹けました。この楽器を自分の過ちでつぶしちゃって、泣きながら母に電話した(笑)のが、大学1年のとき。で、今も吹いているこのバックを、買ってもらったんですが、よくぞ買ってくれたと、感謝しています(笑)。
トランペットは、時代によって使われ方が違います。たとえばテレマンなどのクラリーノ奏法、ハイドンやモーツアルト、ベートーヴェン等オーケストラの中での役割、マーラーなどのロマン派ではソロで活躍する場が増えました。そして、現代奏法…。これらをいかに吹き分けるか。全部同じ吹き方じゃつまらない。バックなら、響きが広いと言えばいいのでしょうか、オールマイティーに応えてくれます。
今年は、大阪フィル以外にも演奏する機会が増えそうなので、バックが活躍する機会も増えます。
日本音楽コンクールでの優勝を記念したコンサートが、まず2月16日(土)に洗足学園の前田ホールで(入場無料)、23日(土)に徳島文理大学のむらさきホールで(一般¥1,000、高校生以下¥500)行われます。3月16日(土)には、かつしかシンフォニーヒルズ(アイリスホール)で金管合奏団「宴(うたげ)」によるコンサートが決まっています(一般¥1,000)。
お近くの方はぜひ! ご来場をお待ちしています。
