サクソフォン奏者 坂口大介
大人の留学記

クローバー・サクソフォン・クヮルテット 
バリトンサクソフォン奏者
坂口大介のオランダ留学記【vol.9】
- SPECIAL FEATURE BY NONAKA BOEKI -

留学生活最終試験

July 20, 2021

こんにちは、日本はもう夏まっさかりでしょうか?
オランダは日本よりも北にある分、すごく暑くなるという日はまれです。
日本のサウナのような夏はないので過ごしやすいですが、僕はあのあっつい夏がけっこう好きなので、寂しくもあります。
どこまでいっても平らな国である為、風が強く、そして天気がころころと変わります。
すごい雨が降っていたと思っていたら、15分後にはウソのような良い天気になったり、山の天気に似ているかもしれません。
降ったと思ったら止む雨。とても強い風。そして自転車社会。
そんな理由でオランダの人は傘をほとんど持たず、雨に濡れても気にしない。
そんな文化があります。

先月(6月)の中頃に最後の試験があって、無事9月から始まった不思議な留学生活が終わりました!
今回はその最後の試験について😊

日本では大体、2月~3月頃に行われる最後の試験がこちらでは5月~6月に行われます。
サッカーもそうですが、秋から春までしっかり勉強したり働いたりして、夏はたくさん休もう!というサイクルですね。
学生にとって最終試験は英語でFinal presentationと言われ、一年の総まとめのような行事です。
先生の前で演奏をするのは日本と一緒ですが、きちんとプログラム、プログラムノートをつくらないといけなかったり、 モチベーションノートを書いたり、より実際のコンサートや演奏活動を意識したものになっています。
演奏時間も幾分長く、僕の場合は50分、大学院生だと90分とあります。
これは1人の先生に対する学生の数が限られているからできる事ですね。
僕は留学期間中、8割古楽、あとは現代曲という感じで勉強していたので、それらを並べたプログラムを組みました。

プログラムとプログラムノート、前日に作ったのでちょっと手抜き。

最初に演奏したのは、テオルボ(※)とのデュオでパーセルのmusic for a while。
音楽劇の中の一曲で、『劇中にいろいろ大変な事があったけど音楽がそれを全て解決する』
というシーンで歌われます。
※テオルボというのはリュートの大きな楽器でたくさん弦が張ってあり、見た目がとても素敵な楽器です。


テオルボ

一緒に演奏してくれた上田朝子さんは、ヨーロッパで既に6年間古楽を勉強している強者。
リハーサルでもいろいろなアドバイスをくれて、すごく助かりました😊
彼女と会ったのは今年の4月で(それまで彼女はスイスのバーゼルに交換留学していました)、そこから一緒にリハしたり教えてもらったり、 彼女からの縁で人の繋がりも増えていって、本当に助かりました。
出会いって本当に貴重です!
ちなみに彼女はこの後9月から中世の音楽を勉強しにバーゼルにまた2年間留学します。
古楽の人は本当に勉強が大好きです!
クラシックの2倍、3倍の歴史があって、いまだに正解はわかっていない。
古楽奏者はそのまだまだ未開の音楽世界をずっと追い求めて、その魅力をすごく感じつつ、一歩踏み出したら抜け出せないある種の沼をも感じます。

二曲目がパーセルのトリオソナタをバロックヴァイオリン、バロックチェロ、テオルボとサックスで。


ここまでは、先生であるラーフから買ったブッシャーという楽器で演奏しました。
BUESCHERは1930年代頃に使われていたアメリカの楽器で、あったか〜い音がします。
当然、バロックとは関係のない時代の楽器でサックスはサックスなんですが、モダンの楽器とまた違う味のある音色があり、 音色を溶け合わせやすく、古楽器とのアンサンブルにはとても向いています。

BUESCHER

そしてバッハのチェロ組曲の6番。
これはラーフ先生が編曲したもので、もともと五弦のチェロ(ハイポジション用に一本弦を足したもの)の為にバッハが書いているので とにかく音域が広い。
内容も濃厚で、大変でした。まず一人で20分以上吹き続けるのが大変…。

bach cello suite No.6よりprelude / Arr.Raaf Hekkema それを乗り越えた先に音楽があり、まだまだ至らないなぁとは思いながらも人前でこのような曲を演奏できたのは一ついい思い出になりました。
10年前はこんな未来があるなんて、想像もつかなかったなぁ🐧

オランダに来てから組曲の5番6番とラーフ先生のアレンジで勉強する事で、バッハのチェロ組曲を一応一通り演奏した事になりました。
ここからどう付き合っていくかが人生の楽しみです。

さらにオランダで出会ったスロベニア人の作曲家、サックス奏者であるTilen Liber君に委嘱したコントラバスとバリトンサックス、それをエレクトロで加工した曲を試験の為にレコーディング。
コロナ渦の制限で一部レコーディングを出さないといけなかった為ですが、彼がうまくエレクトロで音を加工してくれて面白い体験になりました。


その名もGiri!
日本の義理から作曲したそうですが、何が義理なのか、なぜそれをモチーフにしてしまったのが謎です。
欧米人がタトゥーに変な日本語入れる感じですかね🙂
曲は暗くて、宇宙の底みたいな感じでした(笑)

というわけで試験が終わり、今年の全ての勉強が終わりました。
9月からコロナもあり、ほとんど練習しかしてなかったので、それをしないでいい毎日に解放感がある一方で、学生は学校がないと本当にする事がないなぁという毎日です😵
一時期、急激にホームシック、日本帰りたい病になりましたが、最近は旅行の計画をしたり、夏休みを楽しんでいます。

8月に一回、日本に帰りまして9月頭には演奏会も企画しています。
まだまだ大変な世の中ですが、日本に帰るのを楽しみにしています!