オランダ、日本 それぞれの音楽大学について
March 5, 2021
オランダでも本格的な冬が始まりました。
1月半ば、ヨーロッパを大きな寒気が襲い、オランダでも初雪となりました。
これがけっこうな雪で、実はオランダでしっかりと積もるような雪が降るのは珍しいことであり、何年かぶりの大雪だったそうです。
東京と同じように交通が麻痺し、色々大変でしたが、雪の街並みはとてもきれいでした。
12月から始まったロックダウンはまだ続いていて目下の悩みは髪をどうやって切るか…
美容院も床屋も営業していないので、もうボサボサです😦
今回はオランダと日本での音楽大学の違い、学生生活の違いを書いてみようかなと思います!
○たくさんの留学生
まず、日本との大きな違いはやはり留学生の多さです。
入学してから驚いたのですがオランダの音楽大学でありながら、ハーグ音楽院にはオランダ人がそんなに多くはいません(体感10%くらい)
例えば、僕のいるサクソフォンのクラスは12人の生徒がいますが、オランダ人は一人。
また古楽科では、それぞれの国でクラシックを勉強した後に留学してくる学生が多く、ヨーロッパはもとよりアメリカ、中国、韓国、そして南米諸国、本当に様々な国から学生が集まってきています。
そして音楽大学の先生にしても半数くらいは外国人かもしれません。
これはオランダという国のあり方を示す一つの象徴かもしれません。
例えばサッカーなどがいい例ですが、扉を大きく広げて世界中からタレントを集め、それを混ぜ合わせて一つのチームを作ります。
外から人材を集め、それをミックスして新しい何かを生み出す。これが一つのオランダ流であり、大きなビジネスモデルにもなっています。
オランダはヨーロッパの中でも特に間口が広く、例えば労働ビザなども取りやすいし、人の動きにも寛容な社会です。
オランダ語が国の言語でありながら、ほとんどの場所で英語が通じて不自由なく生活できるのもその現れでしょう。
現在、人口の75%がオランダ人、残り25%は外国人。
お隣ドイツと同じように、オランダ人と移民の間の多少の移民問題などはあります。(特にトルコ系と中国からの移民が多く、街の中に大きな居住区を作っているのでオランダ人からは疎まれている部分もあるかもしれません。)
それでも、様々な国の人達が比較的うまく共生している国であると思います。
さて、話を学校に戻して、音楽院では様々な国から集まった学生が皆、実に仲良く勉強しています。
同じ国同士の学生が集まるということはあまりなく、生徒数もそこまで多いわけではない為、誰でも友達といった感じです。
音楽を真剣にやっているというお互いへのリスペクト、故郷からはるばる勉強しに来ているというシンパシーもあり、差別みたいなものはここではありません。
一つ感じるのが学生の勉強に対する強い意識。
例えば日本なら主科のレッスン以外、少し学生が甘えてしまう等の側面もあると思うのですが、こちらではみんな前のめりになって勉強しています。
例えばグレゴリオ聖歌のクラスでは、みんな興味津々に不思議な楽譜を歌うし、オンラインのセミナーなどでは質問が尽きることはありません。
ヨーロッパの人達はうまく演奏するということと同じくらい、演奏の背景や考え方、歴史にすごく興味を持っているのだなと感じます。
古楽の分野においては特にですが、うまく演奏する事よりも、どう演奏するか、なぜ演奏するか。
レッスンも演奏しているより話している時間が長いことが多いです。
討論というと日本人はシャイで議論を怖がる傾向があると思います。
これは一概に悪いとは言えなくて、その分、日本人はその時々の空気を読むのに長けていると思っています。
日本人はアンサンブルが上手いと言われる一つの理由かもしれません。
「語るより聴く、語らずに演奏で示す」という文化ですね。
話は変わって、前にハバネラ・サクソフォンカルテットの話を聞いた事があるのですが、彼らもいつも合わせの前に沢山話をするそうです。
言葉でも耳でも音楽を作り上げる。この貪欲さがあの素晴らしいアンサンブルを作っているのだと思います。
何にしろ、会話から何かが産まれてくると信じているのがヨーロッパの大きな文化ですね。
○サクソフォンのクラス
ハーグ音楽院のサクソフォンの学生は現在12人。
国別でいうと一番多いのがポルトガル人で5人、オランダ人、スペイン人、ラトビア人、ベルギー人、スロヴェニア人、ポーランド人、僕とヨーロッパ各国から集まっています。
ポルトガル人が多いのは何かコネクションがあるかららしいのです。
たくさんの国の学生がいると、演奏や性格も様々なのがやはり面白いです。
例えば楽器にしても日本だったらセルマーかヤマハが大半を占めて、続いて時折ヤナギサワやクランポンが続くといった感じですが、こちらではカイルベルスを使っている学生がおり様々。
マウスピースも人それぞれ、クリスタルの物を使っている学生も居て、とても個性的です。
演奏の感じも人それぞれで、同じ先生のもとで学びながら、統一感を感じません。だからアンサンブルをやったりすると、とてもデコボコします笑。
そもそも室内楽への興味が薄い感じさえします。
一方、日本の管楽器教育の一つの特色として、コンクールを基準にカリキュラムやスタイルが作られているという側面があると思います。
中高生では吹奏楽コンクール、音楽大学では各年度の試験そして管打楽器コンクールといった大きな目標があり、それに沿って教師も生徒も学んでいく。
それぞれの音大、門下の特色がありつつも、全体として一つの方向を向いているような所があるように思います。(例えば、一年生の時はこの曲をまずやって次にイベールに挑戦して、その後で現代曲に取り組み始めて、、、のような)。
これによって「競争がわかりやすい」「学生が何を勉強するか探しやすい」といったメリットがあり、ある意味合理的で、このおかげでコンクールなどにも強くなれるという側面もあると思います。
一方ここハーグでは、それとは別な空気を感じます。
「音楽はあくまで個人の物である。」そんな感覚でしょうか。
それぞれが自分の好きな物を勉強し、演奏する。
それはバランス悪い事もあるけど、何か面白い演奏を生み出している気がします。
これが一つのオランダのスタイルかもしれません。
ドイツやフランスのような大国ではなく、様々な国の人々が昔から集まってきたオランダ。
クラシックの演奏全般においても、伝統よりも革新、何かに縛られない自由さ、アイデアをとことん主張する面白さなどを感じる事が多く、これが他のヨーロッパ諸国と違う独自の魅力を作っていると思います。
音楽教育の雰囲気、システム (スクール) については興味のあるところで、例えばフランス、アメリカ、ロシアなどもそれぞれの教育の雰囲気があると思います。
それらを比較したらきっと面白いですね。(誰かまとめてください!)
◯最後に
言葉って大変ですね!!
みんな苦労したという話は聞くものの、どのくらい大変だったかという具体的な様子を聞いた事はあまりないので、僕の現状を告白してみます🐧
日々苦労の毎日なのですが、具体的には
☆個人レッスン ほぼ問題ない
➣ 先生がこちらに合わせて、簡単な言葉で教えてくれる。音楽の大概の事はなんとなく想像できるから。わからなかったら歌って伝えられるのも大きい。
☆理論や討論系の授業 超ピンチ
➣ 言っている事の50%理解できていればいい方。時折される質問に対し、トンチンカンな答えを言っているのだろうなーと感じながら、日々やり過ごす。
毎回、心は折れる。
☆友達との会話
➣ 半分くらいは適当にya-を連呼。コロナもあり、毎日会話があるわけではないので、成長甚だ遅し。そろそろ呆れられてきている感あり。。といった感じです!
学校では全てが英語で成り立っているわけなのですが、正直なところ、なかなか上達しませんね😵
渡欧前、勉強していたものの、なんとかなるだろうと、高を括っていた所があり、それは甘かったです笑
この時代、Google翻訳などがあり、それに頼ってしまうのもなかなか覚えられない一つの要因かもしれません🙃
あと半年、がんばるぞ!
では、また次回!