サクソフォン奏者 坂口大介
大人の留学記

クローバー・サクソフォン・クヮルテット 
バリトンサクソフォン奏者
坂口大介のオランダ留学記【vol.3】
- SPECIAL FEATURE BY NONAKA BOEKI -

授業とレッスン

December 25, 2020

12月、クリスマスです!
ヨーロッパの冬の魅力の一つといえばクリスマス🎄
このコロナ渦の中でもそれは変わらず、街中はイルミネーションで飾り立てられ、歩く人々もどこか幸せそう。
あちらこちらの家の窓にも可愛らしいツリーが見えたり、電球で彩られたりしていて暖かい気持ちになります。
オランダのちょっと不思議な習慣ですが、こちらの人達は家のカーテンを閉めている事はあまりなく、家の中をオープンに外に見せています。
これはキリスト教の教えでカーテンを閉めているのは家に何かを隠していると思われるのでよくないと思っていたからだそう。
その分、オランダではどのお家も内装がとてもおしゃれになっています。
特に学校帰りにそんな暖かい家の雰囲気を見るとちょっと癒されます。

ハーグ中心の繁華街にあるデパート クリスマスの街と私 それぞれのお家でクリスマスシーズンを楽しんでいます

第三回目の今回は、僕が今勉強している古楽のレッスンや授業についてお話しします!

現在、僕はクラシックのレッスンをラーフ・ヘッケマ先生に習いながら、古楽のレッスン、授業、クラスに入らせてもらっています。
クラシックは個人レッスン、グループレッスン、室内楽をとっているのですが、もしかしたら勉強の割合で言うと、古楽の時間の方が多いかもしれません。
それぞれの内容はというと

◯まずは古楽の個人レッスン。
オーセントリック・クラリネットの第一人者であるエリック・ホープリッチ先生にレッスンを受けています。
先生は現在のクラリネットの原形とも言える楽器を研究、演奏してきた第一人者でプレイヤーとして若き頃、ブリュッヘンとモーツァルトの協奏曲をレコーディングするなど古楽クラリネットという分野を作り上げた最初の人物です。
18世紀オーケストラを始めとする古楽オーケストラで頻繁に演奏しており、日本にもバッハ・コレギウム・ジャパンなどに参加する為に来日していました。
先生はイギリスに住んでいるので、このコロナ渦においてはオンラインのレッスンです。
主にテレマンやバッハを見てもらいながら、後期バロックの一般的な演奏習慣を教えてもらっています。
古楽の人の口癖、「モダンの人はねー、こうやるよねー」。でも、そう言われるのもしょうがないほど演奏の仕方は違います。
それらの基礎を一から十まで親身にレッスンしてもらっています。
質問にもしっかりと答えてもらえてと、僕にとってはとてもありがたい存在です。

エリック・ホープリッチ氏

◯理論の授業として受けているのがearly music studyという科目。
古楽の歴史を学ぶというよりは、当時の文献を読みながら、資料の読み取り方を学んだり、どのように音楽を学ぶかを討論するような授業です。
14世紀くらいから18世紀までの幅広い時間の中で例えばその時代時代cadence(終止)のあり方などを学びます。
正直、英語が苦手な自分にとっては一番大変かもしれない授業。
現状、知らない専門用語が降り注ぐ中、ふいにコメントを求められたりして、授業が終わるまで全く気が抜けません(笑)
実際、オンタイムでは半分くらいしか理解できず、授業後にwebで調べたり、日本の文献取り寄せたりしながらなんとかついていっていますが…宿題がとてもハード。
最近出た課題は「音楽と言葉の句読点のアナロジーを定義せよ」という日本語でも大変そうなお題。
資料をGoogle翻訳など駆使してなんとか読み取り、毎回必死に提出しています。

このような形で主にオンラインで実施されます。
こちらの学生はみんな本当に活発に自分の意見を言います。
必死についていってます

◯historical improvisation
これはとても楽しい授業です。
十人くらいのグループで古楽のスタイルでの即興を学ぶワークショップ的なスタイルのクラス。
数字付きの低音を読みながら、その上に即興でメロディーを作ったり、カノンを即興で演奏したりします。
ジャズの即興と通じる事だと思いますが、難しいのが“そのスタイルで音を紡ぐ事”。
コードに対して正しい音を出すのも大変ですが、例えばダンスの様式、喋り方、そして雰囲気、そういうのを表現するのはもっともっと難しい!
そんな中、バロックヴァイオリンの友達が音を出すとすんなりそれが聴こえて来るのです。とても自然に。
そういうのを横目で素敵だなと思いながら、演奏するのがとても楽しいです。
やはりジャズに通じる事だと思いますが、とにかくよく聴いてコピーする事、それが一番大事だと思っています。

中にはバロックトランペット(バルブのないトランペット)を専門に勉強しにアメリカから留学してきているクラスメイトもいます。
彼らはアメリカでCDも出しておりますが、バロック音楽をあらためて勉強するために留学しているそうです。
音楽へのこだわり、熱意を強く感じます。

和やかな雰囲気の授業、真ん中にあるのはバロックトランペット

他にpracticum polyphoniæ、ornament and diminution のクラスがありますが、長くなってきたのでまたそれは次の機会に!

この年で留学して思ったのですが、新しい事を取り入れる充実感は若かった時よりも増している感じがします。
学校を卒業して10年以上、もちろん仕事の中で沢山の事を学んできたのですが、学んできたからこそ、今全く新しい事を取り入れる事がとても楽しいです。
もちろん脳は衰えているので、覚える速さなんかは遅くなっていると思うのですが、日本の音大で学んでいた時よりも、今の方が学ぶ喜びを多いに感じられている気がします。
これは大人留学のとてもよいところかもしれません!

冒頭で素敵なクリスマスの事を書きましたが、この滞在期を書いている当日12月15日、ついにオランダにロックダウンがかかりました😣
今回のロックダウンではレストランだけでなくスーパーマーケット以外の全てのお店が営業休止になります。
コロナの中、ゆるい空気感で有名だったオランダも街中に警察官が増えたりと<ピリッ>とした雰囲気になってきました。
個人的には自由すぎるオランダの街の中が少し落ち着いた感じがして、悪くないなと思ってしまうところもあるのですが、なんとか状況がよくなっていくのを祈っています😢

次回はオランダの生活、お金事情、そして沢山の留学生などについて書く予定です!

ではまた!