インタビュー
INTERVIEW

小林裕氏×メーニッヒ/イングリッシュホルン

イングリッシュホルンのトップブランド、メーニッヒを、東京フィルハーモニー交響楽団首席奏者、小林裕氏に試奏して頂きました。

小林裕氏メーニッヒはもともと旧東ドイツを代表するメーカーでしたから、いい技術者はたくさんいたのですが、材料が問題。質にしろ量にしろ、西ドイツに比べるとどうしても劣っていました。ですから、昔の印象は、東のなかでは頑張っているなという程度。技術者がいくら努力をしても限界はありますからね。

東西統合後のメーニッヒは、非常に意欲的で、従来モデルの改良をしたり、新しいモデルを出したりと、かなり気になるメーカーとなっていました。それでも、このイングリッシュホルンを初めて吹いたときは、本当に驚きました。その吹奏感の心地よさ、音の良さ。今もその驚きが変わることはありません。まったく新しいコンセプトで作られたとしか思えない、これまでのイメージを一新する画期的なモデルだと思います。
それまでの旧東ドイツ系の楽器の音は、どちらかというと堅い、しっかりとした輪郭があるというイメージ。それが、このメーニッヒは、輪郭も柔らかく、自分がとても上手くなったような気分にさせてくれる音なんです。

第一印象で「この楽器なら絶対にいい音が出せる」という確信が持てました。設計がいいのでしょうね。この“いい音”は上級モデルからスチューデントモデルまで6機種すべてに共通しています。
もちろん、それぞれのモデルでキャラクターの違いはあります。僕は、ココボロ材のベルと金メッキのポストが特徴のディアマンテという機種の方が吹奏感がソフトで、鳴りも柔らかく、若干太い音であるように感じています。そもそも、標準のモデルでベルだけココボロというのは、非常に珍しい。初めてなんじゃないかな。すべてグラナディラのモデルの方が、若干内径が違うということもあって、音をまとめやすいという人もいるようですが、好みの違いだと思います。

小林裕氏実は、昨年11月に、学生時代からずっとあたためてきた室内楽によるコンサートを実現することができました。その際、弦との室内楽をやるのなら、フランセのイングリッシュホルンと弦のカルテットは絶対に吹きたいと思いました。が、オーボエはマリゴひと筋の僕も、イングリッシュホルンはちょこちょこ替えていましたし、絶対にこれだという楽器にまだ巡り会えていなかった。
ちょうどその頃、このメーニッヒが日本に入ってきたばかりだったのかな。勧められて吹いてみたら、もうびっくり。これは素晴らしい楽器だと、すぐにオーケストラの本番でも使いました。まわりの評判も非常に良かったですね。それでしばらく調子にのって、首席奏者であるにもかかわらず、イングリッシュホルンを吹く機会を一所懸命つくって吹いていました。間違いなく自分に合っていると確信が持てるまで、ほとんど時間は必要ありませんでした。もちろんそのあと購入しましたよ。

結局、11月のコンサートでもフランセとモーツァルトの2曲、イングリッシュホルンで吹きました。自分でも非常に満足できる演奏ができました。で、とある音楽誌に批評が載っていたんですが、イングリッシュホルンの演奏をすごくほめてくれていました。首席オーボエ奏者としてはちょっと複雑ではありますが、メーニッヒという楽器の良さがそう言わせたのかもしれませんね。

アマチュアの中高生や、初めてイングリッシュホルンを吹く人にも自信を持ってお奨めできる楽器です。スチューデントモデルもキーが少ないくらいで、なんら楽器の本質は変わりありません。予算の関係で何か中古品をと考えているなら、絶対にメーニッヒのスチューデントモデルを買ったほうがいいと思います。初心者にとって楽器選びの条件は、音と吹奏感。それはプロの場合も同じですが、特にオーボエやイングリッシュホルンの場合、“いい音”と いう感覚を掴むまで多少時間がかかります。それがメーニッヒなら、無理なく“いい音”に導いてくれる。しかも、とても気持ちよく吹ける。この、吹いていていい気分になれるというのはとても大切なことで、楽器の上達にも役立ちます。僕も、もうこれでおそらく、イングリッシュホルンはずっとこのメーニッヒを吹いていくと思います。これ以上の楽器は想像できませんから…。


小林 裕(こばやし ゆう)

東京生まれ。オーボエを高橋志郎、齋藤勇二の両氏に師事。文化学院高等部卒業後スイスのバーゼル市立音楽院に入学、オーボエをアンドレ・ラルドロ氏に、ピアノと室内楽をウルリッヒ・サンドマイヤー氏に師事。在学中にバーゼル・シンフォニエッタの設立に参加。またソリストとしてバーゼル交響楽団等と共演する。1986年ドイツのヒルデスハイム市立歌劇場管弦楽団入団。またダ・カメラ木管五重奏団のメンバーとしてヨーロッパ各地で公演を行う。1991年東京フィルハーモニー交響楽団入団、現在同団主席オーボエ奏者を務める傍ら、国立音楽大学、洗足学園音楽大学講師として後進の指導に当たっている。「ゼフィルス・クインテット・トウキョウ」、ダブルリードアンサンブル「エスプレッソ」メンバー。

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