─おふたりともオーボエもマリゴを吹かれていますね。
蠣崎氏: ええ。各メーカーそれぞれにいい音はするのですが、マリゴは本当に独特。まん丸いというか…。
最上氏: 甘いというか、柔らかいというか…。
─最上さんはオケに入ってマリゴに替えられたそうですね。
最上氏:
はい。オケでハーモニーを作るには以前の楽器だと少し難しいと感じていて、蠣崎先生にも相談したんです。
そうしたら、ちょうど良いのがあるということで、今吹いているマリゴを譲っていただいたんです。実際にオーケストラで吹き始めてみて「なるほど、だからオケではマリゴを使うプレイヤーが圧倒的に多いんだな」ということがわかりました。
蠣崎氏: オーボエという楽器は、傾向として、音の並びやすさと音色の作りやすさが逆のベクトルを向いていると思うんです。マリゴは、音の並びやすさではなく、音色が作りやすい方向を向いている。音は作れないけれど並びやすいという楽器は結構あるんですが、そういう楽器だと、1人のときは吹きやすくても、いざ合奏の中に入ってみると溶けないなって思っちゃうんです。だから、僕もマリゴから他の楽器には乗り換えられない。
最上氏:僕も家ではいろいろな楽器を試すんです。でも、いざオケに持っていくとダメ。結局最近はずっとマリゴを吹いています。
─イングリッシュホルンも最近マリゴに替えられたとうかがいました。
最上氏: ええ。蠣崎先生がむちゃくちゃ良いっておっしゃったので(笑)。
蠣崎氏: 僕はオーケストラではイングリッシュホルンを吹かないポジションだから緊急性もないし、今まで持っていた別のメーカーの楽器もすごく気に入っていたんです。
それが、生徒の楽器の選定を手伝ったときの、マリゴのイングリッシュホルンがあまりに良くて…。その後入荷したフルオートのマリゴを即買いしたんです。
最上氏: 僕は時々イングリッシュホルンを吹かなくてはいけないポジションなので緊急性があってずっとイングリッシュホルンを探していました(笑)。先生が楽器を替えたと聞いて、先生が使わなくなったほうの楽器を譲ってもらおうと思ったんです。だいたい自分の先生が吹いていた楽器というのは掘り出し物だし、当時の僕はマリゴのイングリッシュホルンには全く興味がなかった。というのも、大昔にマリゴのイングリッシュホルンを吹いたことがあって、音は良かったけれど、とにかく重くて大変だったという記憶があって…。だから、先生の昔の楽器を狙いました(笑)。
蠣崎氏: 確かにそういう申し出はありました(笑)。でも、僕は今回のマリゴのイングリッシュホルンのほうが絶対に良いと思ったので、最上君に、悪いことは言わないから新しいマリゴを吹いてみろって勧めたんです。
最上氏:
そうなんです。で、まあ、先生がそこまでおっしゃるならと、僕ももう1本入荷していたマリゴをお借りして試しにオーケストラのリハーサルで吹いてみたんです。そうしたら、目の前に座っているチェロの同僚が休憩中にわざわざやってきて「最上さん、楽器替えましたか? 前より全然いいですね」と。もうその瞬間に決めましたよ(笑)。普通はこちらから「楽器を試しているんだけど、どう?」って聞いて、初めて何か言ってくれるくらいなんですよ。それが、わざわざ、ですからね。他にも「何か良さそうだけど、それどうしたの?」とか、仲間内の評判も悪くない。
先日、自分の生徒にイングリッシュホルンの選定を頼まれたので一緒に色んなメーカーの楽器を何本も吹いたのですが、その生徒も結局自ら「マリゴが良いです!」といって購入しました。
蠣崎氏:
今回のマリゴのイングリッシュホルンは見事に良い楽器です。どこをどのように変えたかデータとしてはわかりませんが、僕たちが買ったフルオートも、生徒に選んだときに吹いたセミオートも、どれも素晴らしい。もともとマリゴは昔からいい楽器はめちゃくちゃ良かった。ただ当たり外れが大きくて、正直なところ難しい楽器が多かったのも事実です。
今回の改良された楽器のクオリティーの高さを見ていると、以前はまじめに作ってなかっただけじゃないのかと疑うくらい(笑)。実は大昔ドイツにいた頃、場外ホームランのように良いマリゴのイングリッシュホルンに出会ったのですが、お金がなくて買えなかった思い出があるんです。
最上氏: それは初耳です。
蠣崎氏: そのときは泣く泣くあきらめたのですが、今回はもうあきらめられなかった(笑)。ぜいたくかとは思ったんですが、もう買うしかない。この音! ものすごく密度があって、きめも細かいこの音は他にないですからね。
最上氏: 僕もお金があるから買ったわけじゃない(笑)。僕が買わずにいて、他の人がこの楽器で見事な演奏しているところを想像したら、やっぱり嫌でしたから…。思い切って買って良かったです。音色ももちろんですが、イングリッシュホルンという楽器にありがちな嫌な癖も全くない。
蠣崎氏: そう。たとえばドボルザークの新世界の2楽章の大事なソロ。ラのフラットの音がすごく重要なポイントなんですが、ほとんどのメーカーの楽器はそこでふらふらすることが多いんです。そのため安心して鳴らせなくてとても苦労するんですが、この楽器なら大丈夫。
最上氏: ですよね。それと真ん中のド、下のミといったイングリッシュホルンで苦労しそうな音に嫌な癖がまるでありません。
蠣崎氏: 最上君は仕事で何度も吹いたんでしょう。ステージでの鳴りはどんな感じ?
最上氏:
はい。色々な曲を色々なホールで吹いたんですが、吹いていると、手元でスコーンと鳴ってますという感じではないんです。ですから、そういうのに慣れている人にとっては手応えがないように感じるかもしれません。でも実際には、弦や他の音とまろやかに溶け合いながらきちんと響いている。温かく響いているというイメージですね。
僕はリハーサルを客席で録音するようにしているのですが、それを聴くと、音がとても豊かなんです。
蠣崎氏: マリゴをすすめて良かった(笑)。
最上氏: 本当に(笑)。僕個人的にはオケの中では、たとえば他の楽器とのユニゾンのとき、「あ、チェロとイングリッシュホルンだ」ってわかるのではなく、「何だろうこの音は?」って思ってもらえるような、要するにミックスされた音、響きを作りたいと思っているのですが、ダブルリードはそれがなかなか難しい。でも、このマリゴならそれができる。それを弱いと感じる人がいるかもしれませんが、僕の求めるイメージでは決して弱くない。温かく、ふくよかに調和して客席で響いています。
─ところで、オーボエとイングリッシュホルンはメーカーをそろえたほうがいいのでしょうか?
蠣崎氏: 僕はイングリッシュホルンをめったに吹かないので何とも言えないんですが、知り合いのオーケストラプレイヤーは「持ち替えることが多いので、息の入れ方の傾向が似ていないと困る」って言っていますね。
最上氏:
それはそうですよね。オーボエが丁度良い響きで鳴っているのに、イングリッシュホルンだけ息が入っちゃうとか入りにくいとかパーンと突き抜けたりしたら良くない。同じメーカーなら傾向も一緒でしょうから…。
そうそう、実際に吹いていて気付いたんですが、マリゴはキーの配置もいいですね。とくに左の小指のキーポジションがとても自然で、持った感じがオーボエに近い。だから、さあイングリッシュホルンだぞって身構えた手の開きをしなくて済むんです。これまでオーボエとイングリッシュホルンで感じていた左手の違和感は全くありません。これは画期的だと思います。
僕の楽器はフルオートですが、セミオートもキー配列は変わらないので、中高生の皆さんにもおすすめです。ともあれ、オーボエと同様、音量、鳴り方、音色と、とてもいいバランスの楽器だと思います。このマリゴなら、より繊細な表現にチャレンジできると思っています。本番で色々と試していきたいですね。
蠣崎氏: 僕も早く本番で吹きたいな(笑)
◆MARIGAUX English Horn
930 セミオート 希望小売価格:¥1,249,500
935 セミオート LowB♭付 希望小売価格:¥1,344,000
940 フルオート 希望小売価格:¥1,375,500
※価格は2011年11月現在の税込金額となります。
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蠣崎耕三(かきざきこうぞう)
1983年京都市立芸術大学音楽学部を卒業。在学中、第51回日本音楽コンクール入選。
1984年DAADドイツ政府給費留学生としてミュンヘン音楽大学大学院へ留学。留学中、ベルリン放送交響楽団、ヨーロッパ室内管弦楽団など数多くのオーケストラに客演。1987年帰国。
第4回日本管打楽器コンクールオーボエ部門第1位入賞。札幌交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団を経て、現在読売日本交響楽団首席オーボエ奏者を務める。
紀尾井シンフォニエッタ東京のメンバーとして、また独奏者、室内楽奏者としても活躍するかたわら桐朋学園大学准教授として後進の指導にも当たっている。岩崎勇、ギュンター・パッシーンの各氏に師事。
最上峰行(もがみたかゆき)
福島県原町市(現南相馬市)出身。桐朋学園大学音楽学部中退。
これまでにオーボエを鈴木繁、似鳥健彦、蠣崎耕三、宮本文昭各氏等に師事。
2000年10月、NHK・毎日新聞社共催「第69回日本音楽コンクール・オーボエ部門」第3位入賞。フリー奏者としてこれまでに国内主要オーケストラにゲスト首席奏者として多数客演。
小澤征爾音楽塾、サイトウキネンオーケストラ、宮崎国際音楽祭等に参加。ソリストとして、プラハ国立劇場管弦楽団、セントラル愛知交響楽団、のだめオーケストラ等と共演。
現在、東京交響楽団オーボエ奏者。ARCUS、クインテット・アッシュ、各メンバー。
http://ameblo.jp/mogamioboe/







